S1青木雅美

 もともと、米国国防省の考案であることは良く知られている。
 今でこそ市民権を獲得しているインターネットと、それに付随する諸産業であるが、数年前までマニアと称される一部の人種だけの楽しみであったことも、知られた話だ。


無題 投稿者: 投稿日:10月18日(木)00時43分12秒

 うざい。さっさと死ね


 インターネットの急速な社会への浸透の原因は、挙げはじめるとキリがないので割愛するが、一要因として個人サイト、一般的にはホームページと呼ばれるこれらの多様化かつ急速な増殖が挙げられるだろう。
 なかでも、チャット・掲示板といわれる、究めて匿名性が高く、時と場所を選ばないコミュニケーションツールの躍進は盛況で、どの個人サイトにも設置されており、「リンクページは忘れても、板だけは忘れるな」と言われるほどホームページ立ち上げ時の「お約束」とされている。


管理者さんへ 投稿者:福音 投稿日:10月18日(木)01時15分01秒

 世の中には貴女以上に苦しんでいる人がいると思います。私たちの話を一度聞いてみてください。
 ハナル様は生きとし生ける者全てをお救いになります。


 逆に、その性質からだれの書き込みであるか究明することが難しい。
 そのため、悪意ある書き込み、いわゆる「荒らし」によって書き込む人間がいなくなったり、加熱した討論が水掛け合戦に発展し閉鎖に追い込まれたりで、ネットの藻屑と化すサイトはそれこそ星の数ほどあるのだろう。


無題 投稿者:carigura 投稿日:10月18日(木)01時23分41秒

 オ○ム、ひっこめ(爆


 だが、そういったサイト閉鎖の原因となる要素を逆手にとり、アクセス数をメキメキ上げているサイトも存在する。
 青木雅美が今覗いているサイトもその一つだ。
 容姿端麗、学業優秀、言い寄る野郎共をクールに捌くあたり同姓から反感を買いそうな彼女だが、持ち前の人当たりの良さで、そこそこ高校生活を楽しんでいる。
 しかし、このひとときだけは彼女も「だらけモード」に徹していて、ベッドに寝そべり、ジャンクフードをモソモソ食べたりしながら携帯電話を覗いている。
 キャラクターもののストラップ数本をぶら下げたミントグリーンの本体とは対照的に液晶画面の映像は、暗い。
 黒地に赤という、いかにもアングラっぽい掲示板で、書き込み内容も外観を裏切ることなく、管理者への批判、誹謗中傷がほとんどで、あげくは書き込み者どうしの揚げ足の取り合いなどもある。


はぁ? 投稿者:たこちゅー 投稿日:10月18日(木)01時25分01秒

>苦しんでいる人
 価値観なんて個人で違うんだから、押しつけはやめてくれりょん(;´ー`)ヤレヤレ


 青木雅美は時折くすりと笑いながら画面をスクロールさせていく。
 たとえ自分の正体がわからなくても、批判されたり罵られるのは気持ちのよいものではない。事実この掲示板でも、批判され、それに対して自己弁護し、さらに罵られ、結局掲示板から姿を消した者を何人も見ている。彼女にとってそれは無様にしか見えなかった。
 もとより彼女には発言する気などない、いわゆる「ROM」というやつだ。
 彼女は傍観することを楽しんでいた。評論家と称される人々が、収束しない話題を夜中に延々繰り広げる手合いのTV番組を見ている感覚に近いのかもしれない。

 元々、新しい物好きなクラスメートが広めたサイトだった。「最後の扉」というタイトルの個人サイトであるが、彼女たちの中ではもっぱら「自殺ホームページ」と呼ばれている。


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