市内女子高校生、はねられる
  ――平成11年9月12日 某地方新聞

 交通事故少女、原因不明の昏睡状態が10日間
 原因は病院。問われる医療体制、杜撰な管理
  ――平成11年9月26日 某新聞

 血清在庫切れ?厚生省、あきれる
 疑惑、有名代議士秘密裏に入院、入院中事故少女と同じ血液型
  ――平成11年9月27日 某週刊誌

 代議士秘書vs小高院長「カネはもらってない」
 隠蔽、献金、小高院長ココだけの話
  ――平成11年9月28日 某週刊芸能誌

---- 夜
 樹齢百年を数えようかという壮麗な八重桜が、闇の中に己を誇示するかのごとく輝いている。
 その袂、子供であればすっかり収まってしまえる太い根の間に、年の頃15、6であろうか、少女が背を預けている。

 遠くでサイレンの音が響いている。
 しかし、少女には聞こえない。

 力なく根に添えられた腕の白さと、うなだれて顔を隠す髪の黒さが、等身大の日本人形を思わせる。
 サイレンの音が近づいてくる。
 本来、真っ白であっただろうセーラー服を朱に染めあげ、首筋から溢れる鮮血はそのまま彼女の身体をつたい、地に染み出している。

「くすくす」

 なま暖かい風といっしょに笑い声が流れていった。
 しかし、少女には聞こえない。
 


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